北海道そば研修 2日目|幌加内へ。蕎麦畑から一杯のそばになるまでを学ぶ

北海道研修2日目。

この日は、今回の旅の中心となる「幌加内そば研修」です。

朝、旭川を出発して幌加内へ。

向かう先は、いつも東京蕎麦キッチンがお世話になっている「そば製粉所すずき」と「鈴木農場」です。

日本有数のそば産地として知られる幌加内。

私たちが普段、教室で使っているそば粉が、どんな場所で育ち、どのような工程を経て粉になり、東京まで届いているのか。

今年も鈴木琢也さんに、実際の現場を案内していただきました。

 

まずは「そば製粉所すずき」へ

石臼の製粉機とふるい機

最初に案内していただいたのは、「そば製粉所すずき」です。

ここでは、畑で収穫されたそばが、私たちが普段使っている「そば粉」になるまでの一連の工程を見せていただきました。

収穫された玄そばがどのように処理され、製粉されていくのか。

普段、私たちは袋に入ったそば粉を開けるところからそば打ちを始めますが、その前にはたくさんの工程があります。

製粉所では2台の石臼を回してそばを挽き、その後、ふるいの機械にかけて粉を整えていきます。

東京蕎麦キッチンへ送ってくださるそば粉は、機械でふるいにかけて終わりではありません。

その後、さらに鈴木さんが手でもう一度ふるいにかけ、異物などが入っていないかを確認してくださっています。

とても手間のかかる作業です。

それでも、教室でそばを打つ私たちや、その先でそばを食べる方々のことを思いながら、一袋一袋、心を込めて粉を製粉してくださっている。

そのことが、とてもよく伝わってきました。

私たちは教室で袋を開ければ、すぐに安心してそば粉を使うことができます。

でも、その「当たり前」の裏側には、こうした見えない仕事があります。

実際に製粉所へ来たからこそ知ることができた、大切な学びでした。

 

粉になる前には、たくさんの仕事がある

玄そばとむき実

そば打ちをしていると、

「今日は少し水が入りやすい」
「この粉は香りが強い」
「今日はつながり方が違う」

など、粉からさまざまなことを感じます。

でも、そば打ちは粉になったところから始まるわけではありません。

畑を作り、
種をまき、
花が咲き、
実がなり、
収穫し、
選別し、
石臼で挽き、
ふるいにかけ、
最後にもう一度、人の手で確認する。

そこでようやく、私たちのところへそば粉が届きます。

教室で最初に手にする「そば粉」は、実は長い仕事の一番最後にあるものなのだと、改めて感じました。

 

東京ドーム約14個分!鈴木農場の蕎麦畑へ

一面のそば畑

製粉所を見せていただいた後は、鈴木農場の蕎麦畑へ向かいました。

鈴木農場の畑は、なんと東京ドーム約14個分の広さがあるそうです。

昨年も見せていただいているのですが、目の前にすると、やはり大きい!

北海道らしい広い空の下に、一面の蕎麦畑が広がっています。

そして白いそばの花が、とても美しい。

東京で袋に入ったそば粉を見ているだけでは、なかなかこの景色まで想像することはできません。

今年は昨年と比べると虫も少なめでした。

受粉の時期のピークを少し過ぎていたためだそうです。

去年より落ち着いて畑を見ることができ、少しホッとしました。

とはいえ、今年は「このあたりにクマが出た」とも聞いていたので、熊鈴を持って畑へ。

美しい花畑のように見えても、ここは観光用に整えられた場所ではなく、本当の農地です。

自然と隣り合わせの中で、そばが育てられていることも実感しました。

 

そばの花と実、そして受粉について

そばの花

畑では、鈴木さんからそばの花や実、受粉についても教えていただきました。

私たちが教室で目にするのは、すでに粉になった状態のそば。

けれど、その前には白い花が咲き、受粉し、少しずつ実ができていきます。

畑の中で実際に花や実を見ながら説明を聞くと、本や写真だけで学ぶのとはまったく違います。

「この花が、やがて私たちが打つ一枚のそばにつながっていくんだ」

そう思うと、畑の景色の見え方まで変わってきます。

 

「そば作りは一年に一度だから」

今回、鈴木さんから伺ったお話の中で、とても心に残った言葉があります。

そばの畑作りは、一年に一度。

だから、ご自身がこれからそばを作れる回数を考えると、

「残り、あと20回くらい。」

その一回一回を大切にしていきたい、とおっしゃっていました。

一年に一度しかできない仕事。

今年うまくいかなかったから、来月もう一度やり直す、ということはできません。

次に同じ季節が来るのは一年後です。

毎年の天候も違えば、畑の状態も違う。

その中で、一年に一度のそば作りと向き合っている。

「あと20回」という言葉を聞いた時、一回の収穫の重みについて改めて考えさせられました。

私たちはそば粉を使う側ですが、その一袋の粉の前には、誰かにとっての「一年に一度」があります。

そう考えると、普段使っているそば粉の見え方も少し変わってきます。

 

その先にいる「食べる人」の笑顔

もう一つ、鈴木さんのお話で印象に残ったことがあります。

そば作りを通して、ご自身のお客様だけではなく、その先で実際にそばを食べる方の笑顔が増えることが嬉しい、とおっしゃっていたことです。

生産者から製粉所へ。

製粉所から、そば屋さんやそば教室へ。

そこでそばを打ち、さらにその先に食べる人がいる。

鈴木さんが作ったそばが東京蕎麦キッチンに届き、

私たちがそれを使ってそばを打ち、

教室に来てくださる皆さんがそばを打ち、

そしてご家族や大切な人と一緒に食べる。

北海道の畑から東京の食卓まで、一本の線でつながっているように感じます。

私たちも、その途中を担っているのだと思うと、とても嬉しくなりました。

 

そして、トラクター体験!

トラクター試乗体験

畑を見せていただいた後には、嬉しい体験も待っていました。

希望者は順番に、実際に使われているトラクターに乗せていただきました。

トラクターの運転席に入ること自体、なかなかできない経験です。

さらにハンドルにも触らせていただき、皆さん大喜び!

運転席から見る景色は想像以上に目線が高く、畑全体を見渡すことができます。

「こんな大きな機械を、この広い畑で運転しているんだ」

と思うと、改めて農作業の大変さを感じました。

大きな車体を操作しながら、広大な畑で作業をする。

実際に運転席に座ったことで、見るだけでは分からなかった感覚を少しだけ体験することができました。

何より、皆さんがとても楽しそうだったのが印象的でした!

学ぶだけではなく、実際に触れて、体験してみる。

これも現地研修ならではの時間です。

 

あじよし食堂で幌加内そばをいただく

あじよし食堂の天ざるそば

見学の後は「あじよし食堂」へ。

幌加内産のそばを使った天ざる蕎麦などを、それぞれいただきました。

もちろん、とても美味しい!

でも今回は、朝から製粉所を見て、蕎麦畑を歩いた直後です。

製粉の工程や畑の景色を見てから食べる一杯のそばは、いつもとは少し違って感じられました。

昼食の時間には、一人ずつ自己紹介をし、

「なぜ、そば打ちを始めたのか」

についてもお話ししました。

同じ東京蕎麦キッチンでそばを学んでいても、始めたきっかけは一人ひとり違います。

普段の教室ではなかなか聞く機会のない皆さんのお話を聞くことができたのも、今回の研修旅行ならではの時間でした。

 

北海道の生徒さんとの嬉しい再会

みんなで集合写真

そしてこの昼食には、嬉しいサプライズもありました。

東京蕎麦キッチンの生徒さんで、現在北海道にお住まいの方が、なんと留萌から会いに来てくださいました。

思いがけない、嬉しい再会です。

東京の教室でそばを通じて出会った方と、今度は北海道・幌加内で再会する。

場所は離れていても、そばを通して人とのつながりが続いていることを感じ、とても嬉しい時間になりました。

そばを教える仕事をしていて良かったな、と改めて思った瞬間でもあります。

 

朱鞠内湖へ

朱鞠内湖(しゅまりないこ)

昼食の後は、さらに北へ向かい朱鞠内湖へ。

広い湖と北海道らしい雄大な景色を眺めながら、幌加内という土地そのものを感じる時間になりました。

畑だけを見るのではなく、周辺の自然や気候に触れることで、この土地で農業をするということを、ほんの少しですが立体的に感じられたように思います。

 

夜は鈴木さんを囲んで旭川で懇親会

懇親会会場

旭川へ戻った夜は、鈴木さんを囲んで懇親会を行いました。

昼間に畑や製粉所でたくさんのことを教えていただきましたが、夜は食事をしながら、また少し違った雰囲気でお話をすることができました。

教室ではそばを打つことに集中しているため、皆さんとゆっくり食事をしながら話す時間は意外と多くありません。

今回の研修では、学ぶ時間だけではなく、一緒に移動し、一緒に食べ、たくさん話す時間を共有できたことも大きな収穫だったように思います。

鈴木さんを囲みながら、幌加内で過ごした一日を振り返る、とても楽しい夜となりました。

 

そばの「その前」を、生徒の皆さんにも伝えたい

今回、製粉所と畑を実際に見て、一つ強く思ったことがあります。

これは、私たちだけが見て終わるのではなく、

東京蕎麦キッチンの生徒の皆さんにも、ぜひ知っていただきたい。

教室では、粉の状態からそば打ちが始まります。

でも、その粉になるまでには、これだけの景色があり、仕事があり、人の思いがあります。

今回撮影した映像や写真を使って、

「蕎麦畑から、そば粉になるまで」

をYouTubeなどでも紹介していきたいと思っています。

実際に北海道まで行かなくても、

「自分が今触っているこの粉は、こんな場所から来ているんだ」

と感じてもらえるようなものにしたい。

そして、粉の向こう側にいる作り手のことまで知ってからそばを打ったら、同じ一杯でも、少し違って感じられるかもしれません。

 

現場を見るからこそ、分かること

実際の製粉所を見て、

実際の畑を歩き、

花や実に触れ、

トラクターにも乗せていただき、

そして作っている方のお話を直接聞く。

インターネットや本から得られる知識ももちろん大切ですが、現場に来ることで初めて分かることがあります。

今回の研修で学んだことを「知識」として終わらせるのではなく、これからの教室やYouTubeを通して、少しずつ皆さんにもお伝えしていきたいと思っています。

鈴木さんが大切にしている、一年に一度のそば作り。

そのそばを受け取る私たちも、一回一回のそば打ちを大切にしたい。

そして、その先で食べてくださる方の笑顔につなげていきたい。

北海道まで来て、本当に良かった。

そう思える一日になりました。

鈴木さん、今年も貴重な製粉所と畑を見せていただき、そしてたくさんの経験をさせていただき、本当にありがとうございました。

この経験を東京へ持ち帰り、これからの東京蕎麦キッチンの教室にしっかりとつなげていきたいと思います。

――北海道そば研修 3日目へ続く。

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